コケを増やすにはコケを播けばいい、ということは知られています。播きゴケ法と呼ばれています。
ウエブ上では、いろんな人がコケの茎葉体を土に播いて育てる播きゴケ法を紹介していますし、またその方法でコケを播いて増やしている人もいます。でも、うまくコケを増やすことができた人は少ないようです。苔神も、そういった方法を何度か試みましたが、あまりうまくいきませんでした。
播いたコケがどんなふうに芽を出し、どんなふうに成長してゆくのか、あまり知られていません。苔神も知りませんでした。そこで、苔神は播きゴケ法の原理を研究してみることにしました。
先ずは、播いたコケの茎葉体からどのようにして新しい芽が出てくるのか、また、新しい芽は茎葉体のどこから出てくるのか、実験をしました。
<実験期間>
2007年1月9日~2007年5月28日
<実験の概要>
1、 採取したスギゴケの茎葉体(仮根部は切除)を被験材料としました。
2、 被験体のスギゴケは2006年10月、新潟県三条市下田地内で採取し、約2ヶ月間、乾燥保存したものを使用しました。
3、 材料は水洗いしました。(仮根部や原糸体、胞子等の残滓を除去する目的)
4、 茎葉体、葉、茎の3種類を被験材料としました。
5、 茎葉体をそのまま、5ミリ程度に刻んだもの、さらにすり潰したもの、3種類を実験しました。
6、 おのおのの実験には同程度の親株を10本ずつ配分しました。
7、 ガラス容器内の寒天培養基に材料を配置し蓋をしました。
8、 直射光のあたらない明るい場所で自然培養しました。(温度、照度は制御しない)
9、 時折、乾燥の具合を確認しながら、霧吹きで灌水しました。
<結果の記述>
1、 茎葉体、茎のみの被験体は、播種後から先端部が成長を続けました。
2、 初発芽の確認は5ミリ程度に刻んだ被験体で、播種後63日目でした。
3、 葉のみの被験体の初発芽の確認は、播種後70日目でした。
4、 すり潰した被験体の初発芽の確認は、播種後85日目でした。
5、 茎葉体の被験体の初発芽の確認は、播種後124日目でした。
6、 茎のみの被験体の初発芽の確認は、播種後70日目でした。(発芽からかなり経過後の確認)
7、 全ての被験体から、新しい分岐芽(新しい株)が発生しました。
8、 各々の被験体から発生する分岐芽の数に一定の傾向があり、粉体が最も多く、葉体、刻体、茎体、茎葉体の順に減少します。
<結果から得られる推論>
1、播きゴケによる増殖は、栄養体からの分岐発芽のメカニズムによるものと推論できます。
2、栄養体の分割の程度によって発芽数が定量的に決定されるものと推論できます。
「苔の種」の開発の基本的な原理がここから生まれました。
By 苔神