スギゴケが枯れる現象の相談の大半が人工的に移植されたスギゴケで、ハイゴケやスナゴケの相談はありません。庭園に移植される苔はほとんどがスギゴケといっても過言ではないのですが、それでいて、スギゴケの栽培や移植についての解説書はありません。
枯れたスギゴケの庭園を見せて頂いているうちに気がついたのですが、枯れたスギゴケのコロニーには、新株が見つからないことが多いのです。
スギゴケの新株の発生は地中の仮根の発達に依存しています。他のコケは枝分かれをすることでも増殖しますが、スギゴケは枝分かれしない(という定説)ので、原糸体からの発芽と仮根からの発芽が株(シュート)数を増やします(倒れたり枯れたりした株から分岐する栄養体繁殖もあります)。スギゴケの仮根については、日本蘚苔類学会会報「蘚苔類研究」2009年8月(第9巻第12号)に、秋山弘之氏が短報を乗せていますので、関心のある方は参照してください。
スギゴケを束にして引っこ抜くと、土の塊が付いてきます。この中にクモの巣のような糸状の塊があります。土を水で洗い落としてみると、写真のような仮根束が観察できます。この仮根から発芽して新しい株が成長します。
スギゴケの仮根は地中に広がって網の目のように広がります。(仮根束といいます)この仮根をしっかりと育てることで、毎年新株が発生し、コロニーが充実してゆきます。
仮根の発達が弱いと、新株の発生が少なくなり、コロニーが弱体化して、やがて倒伏したり、枯れたりする、こんなメカニズムがスギゴケにあると考えます。
スギゴケが枯れる、衰退する現象と、仮根の発達は密接に関係しています。
By 苔神