モスグラフィティーと呼ばれる壁面などにコケで文字や絵を描く表現が話題になっているようです。粉砕したコケをヨーグルトなどに混ぜて、絵の具のように壁面に塗り、それを育てると苔の美しい絵や文字が浮き上がってくるというものです。ネット上にはそんな画像がたくさん掲載されていますが、本当にそんなことができるのか?どうすればそんなふうにコケを育てることができるのか?という疑問が生じます。
苔神にも、そんな質問がたくさん寄せられましたが、原理的に言えば、コケは水分と光があれば育ちますので、壁面でもうまく塗り付けることができれば、育つはずです。
2016年2月に、早速試験をすることにしました。
コケはハネヒツジゴケ(Brachythecium plumosum Hedw.)など、3種類ほど混じったものを用意。ミキサーで粉砕し、ヨーグルトに混ぜて合板に塗り、栽培試験開始。ヨーグルトの他にも、ただ、水で混ぜたものも試験しました。
左端:ヨーグルト 右端:水 2016年2月9日
毎日、霧吹きで水を補給し、3ヶ月間観察しました。途中経過で面白い現象を観察しましたが、結果だけをレポートします。
2016年5月5日 観察 水で混ぜたもの
結果は、ヨーグルト、その他で栽培したものは発芽しませんでした。水で混ぜたものだけが、ご覧のように発芽しています。
試験は室内の窓際で行いましたが、屋外の壁面だと、水で混ぜたものは乾燥すれば剥がれ落ち、雨が降れば流れ落ちてしまうでしょう。おそらく、ヨーグルトは壁面へ塗るための粘性を持たせるために使用するのだと考えますが、少なくとも、水だけで栽培するよりは生育に対する障害があるようです。
今回はコケをミキサーで粉砕して栽培試験をしましたが、粉砕せずに、コロニーをそのまま壁面に付着させて育てる方が、育てやすいと考えますが、どうやって苔のコロニーを壁面に付着させるか、その方法が問われると思います。コケを利用した壁面緑化を実施する企業がありますが、どの企業もコケを付着させる方法を工夫しているようですし、付着させたコケへの給水方法に知恵を絞っているようです。
いずれにしても、モスグラフィティーと呼ばれるコケを壁面などに育てる技術は、未知な部分が多く、苔神にもわからないことだらけでした。
by 苔神