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苔の研究レポート

024 オオスギゴケとウマスギゴケ

 オオスギゴケ(Polytrichum formosum Hedw.)とウマスギゴケ(Polytrichum commune Hedw.)の違いは?という問い合わせが寄せられます。典型的な環境に自生しているウマスギゴケの群落であれば、ほぼ見ただけでウマスギゴケと分かります。明るい全日照の水分の多い地勢です。また、春先から出る蒴を観察し、蒴の頸部が深くくびれていればウマスギゴケと見て間違いありません。これくらいならルーペがあれば観察できます。
 
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        上左:ウマスギゴケの群落           上右:深くくびれた蒴の頸部
 
 茎葉体の外観は、ほとんど差が見られません。経験を積むと葉の長さや葉の厚みなどで見分けられることがありますが、正確ではありません。
 
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        左上下:オオスギゴケ              右上下:ウマスギゴケ
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 オオスギゴケとウマスギゴケは顕微鏡で葉の断面を観察し、端細胞の形状と薄板の細胞数を見ます。端細胞は、オオスギゴケは球状ですが、ウマスギゴケはてっぺんが凹んでいます。細胞の数は、オオスギゴケは4~6細胞、ウマスギゴケは5~7細胞です。
 図鑑などではオオスギゴケは日陰の土上に、ウマスギゴケは明るい場所の粘土質の土上や湿原に、と説明されていますが、日陰のオオスギゴケと同じ場所にウマスギゴケが生息していることもあります。苔神が栽培しているケース内には、オオスギゴケとウマスギゴケが混生しているものもあります。生息環境だけでは、見分けはつけがたいですね。
 By 苔神