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苔の研究レポート

025 ウマスギゴケの育て方

 ウマスギゴケは日本庭園で無くてはならない苔ですが、ウマスギゴケの育て方について、誤った扱いをする造園家が多いようです。先日、テレビで苔を扱った番組が放送され、その中で、ある苔の専門家(?)が「スギゴケは排水性の良い土を好む」と発言していたようです。三条の佐藤康会員がそれが正しいのかと、苔神に問い合わせがありました。佐藤会員は今年からウマスギゴケの栽培を始めており、苔神の指導の下、排水性の悪い水田でウマスギゴケを育てているのです。
 
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             三条市のウマスギゴケ栽培圃場 水はけの悪い休耕田で

 結論から言えば、ウマスギゴケは水を好む生態を持っており、排水性の良い乾燥する場所では育ちにくいのです。日当たりの良い場所で、水分の豊富な環境でウマスギゴケは育ちます。このウマスギゴケの生態の特徴はフィールドワークで観察することができます。
 苔神では、ウマスギゴケの人工栽培試験を行っています。名付けて「湛水栽培」。苔神は水田を持っていませんから、水田のような環境を人工的に作って、ウマスギゴケの栽培試験をしているのです。木箱に小さな穴を一つ設け、排水性を極端に悪くした栽培ケースに播種して育ち方を観察しています。
 
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             2016年6月13日に播種 2016年12月29日に観察

 この試験では播種する苔の種に少し工夫をしていますが、6か月で茎高2㎝ほどにまで新芽が成長しています。育てている場所は苔神の裏の空き地で、陽当たり良好とは言えない場所です。もっと日当たりの良い場所なら、さらに良い結果が得られるのではないかと考えています。
 ウマスギゴケはたっぷりの光量と水分で育てることがコツです。これはウマスギゴケの生態的な特徴なのですが、オオスギゴケやコスギゴケなど、他のスギゴケではまた、異なった生態があり、全てが同じであるわけではありません。
 テレビ番組で専門家(?)がスギゴケについて発言した時、それが何スギゴケのことなのか、区別していたかどうか、それが問題なのです。特に、ウマスギゴケとオオスギゴケでは基本的な生態は異なっているのですが、ウマスギゴケとオオスギゴケを区別できる人はほとんどいないというのが、現状なのです。マスコミやインターネットの情報に惑わされないようご注意!                  by 苔神