ウマスギゴケは枝分かれせずに、年3~5㎝ほど成長します。従って、庭園のウマスギゴケは4年以上経つと、10~15㎝ほどの茎高になります。伸びた茎の下部は次第に劣化して土壌化して行きます。そのため、ウマスギゴケは倒れやすくなります。本来、ウマスギゴケは毎年、土中の仮根部から新株が発生し、コロニーを保持する生態を有していますが、庭園のウマスギゴケの倒伏枯死現象は、この仮根が未発達であるために新株の発生が少なく、コロニーが倒伏し易くなるために起こるものです。
庭園のウマスギゴケの倒伏枯死現象
ウマスギゴケの倒伏枯死現象を防止する方法は、毎年伸び続けるウマスギゴケを刈り込んで茎高を調整します。おおよそ5~10㎝程度の茎高になるよう、ハサミやバリカンで刈り込みます。でも、庭園を管理する庭師の方は、なかなか怖がって刈り込みをしようとはしません。庭師の方が怖がるのには、それなりの理由があります。
伸び過ぎた茎高を刈りこむ時、もし仮根が生育していない場合、刈り込んだ株は全面的に枯れてゆく上に、新株が発生しなければ、そのウマスギゴケは全滅してしまう恐れがあるからです。苔神がこれまでに調査した結果では、まず、庭園に移植されるウマスギゴケの苗に問題があること、そして全面的な枯死を恐れて茎高調整をしないこと、これが倒伏枯死現象を多発させていると考えます。
そこで、苔神では仮根の育成を重視したウマスギゴケの栽培法を工夫し、さらに仮根を定着させる移植法を工夫しました。このやり方で庭園にウマスギゴケを移植すれば、茎高調整のための刈り込みをしても、全面的な枯死を発生させることなくコロニーを維持することができます。
2016年6月に播種して育てたウマスギゴケの苗を、2018年2月27日に全面的に刈り込みしました。その後、約2か月後の5月3日には、新株が一斉に伸び出し、新しいコロニーを形成し始めました。ご覧下さい。(下記画像)
2018年2月27日 刈り込み前の栽培苗
2018年2月27日 全面的に刈り込みした苗
2018年5月3日 新株が発生してきた苗
ウマスギゴケの古い株を刈り取った後、新しい株が発生することは、これまでのフィールドワークで多数観察して来ました。自然界ではこうした再生作用が働いて、コロニーの維持を図っていますが、それを人工的に再現することはなかなか難しいものです。
これからの庭園でのウマスギゴケの移植や管理については、十分に仮根が育った苗を使用すること、仮根を定着させる移植法を用いること、茎高管理の刈り込みを行うことを、苔神は提案します。 by苔神